原因・病態
スポーツを盛んに行っている、10代前半の成長期に多く起こります。腰の後ろにある弓状の骨(椎弓)に、腰を反らしたり、ひねったりするときに力が集中して、骨にヒビが入り(疲労骨折)、X線写真ではわかりませんが、MRI(脂肪抑制画像)では白く映ります(初期)。力が加わり続けるとヒビは広がり(進行期)、最終的には完全に分離してしまいます(末期)。
若い頃には椎弓分離があることに気づかずそのまま生活されている方も多く、分離部骨折が骨癒合せずに分離したままの偽関節状態となり、加齢とともに徐々にすべりが起こり、すべり症による症状を呈すようになる方がいます。
症状
分離症だけでは自覚症状が出ない場合が多いですが、長時間の立ち仕事や、腰を反らせたり横に曲げたりした時に腰痛を訴える場合があります。これは分離している部分の骨の痛みで、下肢の筋力低下や痛み、しびれなどの神経症状はほとんどありません。
一方、状態が悪化しすべり症を呈すると、脊柱管狭窄を起こす場合があり、腰痛の他に下肢の痛みやしびれなどの神経症状を訴える場合が多く、ひどくなると馬尾症状(馬尾症候群)が出現することがあります。
診断
分離し骨折に至った状態では、診断はX線写真(側面や斜位)やCT検査が有用です。
X線斜位撮影では、「スコッチテリアの首輪」と呼ばれる骨折サインが見られます。しかし、初期の分離前の状態は解りません。一方、MRIではX線写真やCT検査では分からない骨折前の初期の変化を捉えられることがあります。
治療
治療は保存療法が第一選択です。腰椎分離症は、大きく初期・進行期・終末期の3つの病期に分類されています。
初期と進行期はまずしっかりしたコルセットを装着して運動を制限することにより、骨折した部分がくっつくこと(骨癒合)が期待できるので、活発な児童に腰痛が持続する場合には、脊椎専門医の診察を受けることが大切です。
しかし、運動制限を行っても、骨折部が癒合せずに分離したままになってしまった場合、分離した部分で腰椎にずれが生じてしまう可能性があり(これを「すべり」と表現し、この病態を「分離すべり症」と言います)、遷延する腰痛の原因になってしまう場合や、腰椎の中を通っている神経が圧迫されて下肢の痛みやしびれが生じてしまうこともあります。
終末期のこのような症状が出た場合、神経痛や腰痛に対する内服治療等で経過をみますが、症状が強い場合や、治療効果が得られない場合には、手術により背骨の一部を削って神経の圧迫を取った後にインプラントで背骨を固定する治療を行う場合もあります。
※日整会疾患説明パンフレットなどから改変