腰椎椎間板ヘルニアに対して、椎弓の一部を切除して脊柱管を広げ且つヘルニア摘出する方法を提示します。
腰部脊柱管狭窄症に対する腰椎椎弓形成および切除術を同様に行って脊柱管除圧したのち、硬膜をよせて突出したヘルニアをとる方法と、それを片側のみ行い侵襲を少なくする方法(LOVE法)があります。
また、それらを顕微鏡下や内視鏡下で行う方法もありますが、各手術法がきちんとなされれば除圧効果は同じであり、大きな違いは組織侵襲の規模による術後創部痛の程度と入院期間であるといわれ、短期入院希望には低侵襲手術は有益ですが、数日の違いであり、低侵襲手術は狭術野で相対的に手技が難しく熟練するまでは硬膜や神経損傷の割合と再手術率が高いとの報告があります。
当院では主に顕微鏡下での手術を行います。
Sencer A, Yorukoglu AG, Akcakaya MO, et al: Fully endoscopic interlaminar and transforaminal lumbar discectomy : short-tem clinical results of 163 surgically treated patients. World Nueurosurg 82:884-890, 2014
ヘルニアのタイプ
腰椎椎間板ヘルニアは、脱出する位置関係から正中型、後外側型、外側型、椎間孔外型(極外側型)に分けられるます。
また、脱出形式として下記の分類があります。出ている場所や脱出の仕方により、術式選択が変わってきます。
術式
全身麻酔下にて、腰部脊柱管狭窄症に対する腰椎椎弓切除及び形成術(別記参照)を行い、そののち神経を包んでいる硬膜管をよせて突出した椎間板ヘルニアを摘出する方法があります。
ヘルニアが正中に近い場合や突出量が多いとき、また視野が大きく確保できる術式のため、癒着や硬膜穿破(飛び出た椎間板が硬膜を破って硬膜下に達している状態)等が疑われる時などに汎用的に施行されます。
ヘルニアが正中~左右どちらかの後外側に突出したタイプのものは、対応する片側のみ展開するLOVE法があり、それをさらに小切開で低侵襲に行う方法もあります。
尚、硬膜穿破は術前画像検査ではわかりにくく術中診断で気づかれることがほとんどであるため、開いて見たら神経が出ていたという事もあり、内視鏡を含め低侵襲小切開では神経脱出に気づきにくく後手にまわる可能性もあるため、術式選択には注意が必要です。
合併症
(手術前の同意書から抜粋)
脊髄や神経根の損傷による下肢麻痺、下肢知覚鈍麻、排尿排便障害出現の可能性。
硬膜(脊椎の中で脊髄を包んでいる袋状の組織)の損傷、及びこの硬膜の中に含まれている脳脊髄液が創部から体外へ漏れる(髄液漏)の可能性(既に穿破により髄液漏れがおこっている場合あり)。
術後感染、髄膜炎発症の可能性。
切開した部分の血腫(けっしゅ)形成による神経麻痺・下肢痛等出現の可能性。
不安定性の発生による追加固定術の可能性。
※日整会疾患説明パンフレットなどから改変