原因・病態
背骨をつなぎ、クッションの役目をしている椎間板は20 歳過ぎから変性(老化現象)が始まると言われています。
この変性が進むと椎間板にひびが入ったり、徐々に潰れてくるなどの変化をきたします。それに伴い骨が変形して出っ張り(骨棘)を生じます。椎間板が潰れて出てしまったり、骨棘が大きくなったりすると、神経の通り道(椎間孔)が狭くなり神経根が圧迫され、神経根症を生ずることになります。
加齢以外に、椎間板が変性したり骨棘が育ってしまうような、過度の負担のかかる姿勢不良(前屈、スマホ操作、パソコン操作等)、繰り返しの重量物の挙上、運動などはこの変性を起こしやすくします。
脊髄症を合併することも多いです。
症状
肩こりや頚部痛などの初期症状で始まり、神経根に応じたエリアにしびれや疼痛が出現します。症状が重くなると筋萎縮なども生じ、手の筋肉に影響がある場合は細かい手の動きが不器用になったりします(巧遅運動障害;ボタンのはめ外しや箸の使用、字を書くことなど不器用になる)。
この病気の進み方は患者さんにより様々です。軽い「しびれ」や鈍痛が大きな変化を認めずに長年経過する方がいる一方で、数ヶ月から数年の経過で手足の動きが強く障害される場合もあり、症状の進行が正確には予測できません。
症状が進行してくると、例え手術をしても症状が残存してしまい、早期に専門医に相談することが重要です。
診断
症状と神経テスト陽性などの診察所見があり、X線(レントゲン)で骨棘の形成や、MRIで神経根の圧迫を認めることで診断します。
必要があればさらに神経根ブロックなどをして同定します。
中年以降ではX線での頚椎症性変化はほとんどの人に見られますし、MRIでの脊髄圧迫所見も症状がない場合でも見られますので、検査所見だけで診断することはできません。
神経内科の病気の一部は症状がよく似ている場合がありますので、注意が必要です。
治療
普段からよい姿勢を保ち、頚椎に対する負担をできるだけ減らすことが重要です。
治療としては、薬物療法(消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、神経障害性疼痛治療薬など)、装具療法、牽引療法(間欠牽引、持続牽引)、温熱療法などがあります。画像検査にて神経根が圧迫されている所見ががあり、保存的療法を行っても生活に支障のある症状が持続する場合は、手術を行うこともあります。
手術では、狭くなった神経根の通り道(椎間孔)を広げる椎間孔拡大術(前方や後方)や神経を圧迫している椎間板や骨棘を取り除いて固定する前方固定術等があります。症状や脊髄症の合併有無等に応じて適切な方法が選択されます。
※日整会疾患説明パンフレットなどから改変