現在の日本において、介護が必要となった原因の約5分の1が骨粗鬆症に関連するといわれています。その原因の一つとして無視できないものが、骨粗鬆症性椎体骨折(osteoporotic vertebral fracture:OVF)です。
多くの施設でOVF初期治療として保存療法が行われていますが、OVFの約36%に進行性の椎体圧潰をきたし、約14%が偽関節(骨が癒合せずいつまでも骨がグラグラしている状態)に至ると報告されています。
その結果、腰背部痛の残存、椎体骨折後の脊柱後弯変形などが起こり、神経圧迫が起こってしまうと下肢麻痺や歩行障害、膀胱直腸障害などの神経障害をきたすこともあります。また、臥床、安静による廃用性の筋力低下、全身状態への影響により長期間にわたるリハビリや要介護の必要性などが生じるようになります。
そこで、早期(受傷1カ月以内)からの外科的介入(手術)が積極的に行われるようになってきており、手術加療の1つとしてBKPがあります。
BKPとはBaloon Kyphoplastyの略で、直訳では風船後弯形成術となりますが、経皮的椎体形成術と呼ばれています。BKPの適応とならない状態もあり、従来の椎体形成術を行うこともあります。
BKP
全身麻酔下にて行います。手術台に腹臥位(腹ばい)の状態で、骨折椎体の中で風船を膨らませて空間を作り、その空間に骨セメントを注入していきます。
骨セメントが椎体外に漏れないように、レントゲン透視装置で確認しながら行います。椎体の壁が壊れているものはセメントが漏れやすくなるため、適応とはなりません。
またPMMAという骨セメントが使用されますが、骨との親和性は低いとされ、1手術1椎体までとなっています。
BKPの利点は手術の侵襲が少ないことと、グラグラした骨を固めることですぐに痛みが緩和されることです。痛みが軽くなるため翌日から起きて歩くことが可能で、中には全く痛みがなくなる方もいらっしゃいます。
椎体形成術
全身麻酔下にて行います。手術台に腹臥位(腹ばい)の状態で、骨折椎体の中に筒を挿入し、筒からハイドロキシアパタイト(HA)やリン酸カルシウム骨ペーストを充填していきます。レントゲン透視装置で確認しながら行います。
BKPほど後湾補正はできませんが、BKP同様に侵襲が少ないことと、グラグラした骨を固めることですぐに痛みが緩和されます。また、PMMAとは違い、骨との親和性は高いと言われています。また、同時に複数椎体行うことができます。
※日整会疾患説明パンフレットなどから改変